人も危ない?猫のダニ寄生虫症とその対策

昨年、野良猫に噛まれた保護活動家の女性が、ダニによる感染症で命を落としたことは記憶に新しいと思います。

猫の寄生虫としてダニはよく知られていますが、直接的な健康被害をもたらすだけではなく、より恐ろしい寄生虫や人にもうつる感染症を媒介することも。

今回は、ダニによる病気や媒介する感染症とその対策についてお話します。

 

猫に寄生するダニと病気

ダニはクモやサソリに近縁な仲間で、おそよ2万種が確認されています。猫に寄生する主なダニは、ツメダニ類、ヒゼンダニ類、マダニ類。

ほとんどが猫の皮膚表面で生活し、皮膚の炎症をひき起こしますが、マダニ類は吸血するために感染症を媒介する可能性が大きく、最も注意が必要です。

ツメダニ類(ネコツメダニ)による病気

足に大きな爪があることが特徴。日本で多くの症例が知られています。

成体で体長0.5㎜ほどしかないので、フケに混じって肉眼で見つけることはなかなかできません。

症状

寄生されたところから大量のフケが出ます。そのため別名フケダニとも。

特に背中でフケが厚くかさぶたのようになります。痒みはあまりないようです。

人への影響

人にもうつりますが繁殖はしません。しかし刺されると猫とちがって痒みが強く、痛みが伴うことも。

ヒゼンダニ類による病気

体長0.1~0.4㎜のとても小さな体の丸いダニ。猫に寄生する種類は、疥癬症の原因となる「穿孔ヒゼンダニ」と「猫小穿孔ヒゼンダニ」、耳に寄生して耳疥癬症の原因となる「ミミヒゼンダニ」がいます。

疥癬症の症状

短い足を使って皮膚表面に穴を開け、その中で生活します。

穿孔ヒゼンダニの場合は主に耳や四肢に、猫小穿孔ヒゼンダニの場合は耳や顔に皮膚の炎症がおきます。

炎症部分のふちは脱毛してかさぶたに。ひどい痒みがあり、かきむしって傷ができたり化膿することがあります。

人への影響

一時的にダニがうつることが。その場合痒みのひどい皮膚炎がおこります。

耳疥癬症の症状

特徴的なのは真っ黒い耳垢がたまること。激しく痒がって何度も頭を振ったり、耳を掻いたりします。放置すると慢性外耳炎になるため、早めの処置が必要です。

人への影響:

ミミヒゼンダニが人に寄生することは知られていません。

マダニ類による病気

体長数㎜~1㎝にもなる大型のダニで、どんな環境にも適応し、日本全国どこにでもいます。

猫のダニ寄生虫症のなかで最も警戒すべきなのはこのマダニ類。

なぜなら吸血するために貧血や皮膚炎のほか、さまざまな感染症を引き起こす原因となるからです。

マダニによる直接的な症状

口器を皮膚に刺し込むために痛々しい傷が残ったり、皮膚炎になることも。

また、大量に寄生されると貧血を起こします(外国にいる種類では、吸血時に注入される毒によって命に関わることがあります)。

人への影響

人にも一時的に寄生することがありますが、痒みや痛みは強くありません。

マダニが媒介する主な感染症その1「猫ヘモプラズマ症(猫の感染症)」

マイコプラズマという細菌を持つマダニに咬まれることで感染するといわれています。

赤血球が破壊され、溶血性貧血を起こし、他に病気を持っている猫の場合、死亡することもあります。

マダニが媒介する主な感染症その2「ライム病(人にもうつる感染症)」

猫にも人にも感染する、スピロヘータという細菌の一種を持っているマダニに刺されることで感染します。

人から人、動物から人の感染の報告はありません。

全身にさまざまな症状が現れますが、咬み跡を中心とする大きな紅斑がでたり、筋肉痛や神経症状がおきたりします。

マダニが媒介する主な感染症その3「日本紅斑熱(人にもうつる感染症)」

リケッチアという微生物を保有するマダニに咬まれると発症します。

発熱と紅斑がみられ、症状が重いと命に関わることもあります。猫の発症例は報告がありません。

マダニが媒介する主な感染症その4「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)(人にもうつる感染症)」

2011年に中国で発表された新しいウイルスによる感染症です。

この病気が注目を浴びたのは、前述した日本の女性が野良猫に咬まれたことで発症し、死亡してしまったからです。

それまでマダニから人への直接的な感染例はあったものの、マダニから猫にうつり、それが人へうつったという感染経路が世界で初めて確認されたため、騒然となりました。

この感染経路は極めて稀だと考えらえますが、特効薬もなく、死亡率も30%と高い感染症であることから気をつけなければならない病気です。

人が発症すると、発熱や消化器症状のほか、神経症状、出血症状がみられ、重症化すると死に至ります。

猫については詳しくわかっていませんが、発症すると発熱や白血球、血小板が減少し、衰弱するとされています。

 

ダニを予防するには

ダニの被害にあわないためには、なによりも予防が肝心です。

ダニの中でもマダニは適応力が高く、日本全国の野山だけでなく、都会の公園の草むらや茂みにも生息しています。

猫の場合は外に出さず、室内飼いをすることが一番の予防です。

しかし犬が同居していたり、飼い主さんが外から持ちこんでしまうことがあるため、室内飼いだけでは完ぺきに予防できません。

動物病院が処方されるノミ・ダニ予防薬を継続的に使用しましょう。

 

寄生されたことがわかったら

ダニの寄生がわかったら、必ず動物病院で駆除・治療してもらってください。

特にマダニは無理に取ると頭だけが皮膚の中に残って炎症の原因となるため、決して自分で取らずに動物病院を受診しましょう。

同居の犬猫がいる場合は、寄生の有無を調べて一斉に治療しなければならないため、みんな一緒に連れていく必要があります。

そうしないと、いつまでもお互いに感染を繰り返して完全に駆除できないからです。

 

まとめ

ダニは、猫にとっても人にとっても病気や感染症を引き起こす嫌な存在です。

ダニから愛猫を守るためにもしっかり予防し、自身もダニを持ち込まないように気をつけましょう。

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NEKOCLIP

博物館に20年勤務していた古生物学系元学芸員。猫は絶滅してしまった化石猫から イエネコ、ライオンに至るまで全部大好き。猫飼い歴ン十年の猫おばちゃんです。 飼育のお悩みから進化学に至るまで、幅広い情報と猫の素晴らしさをわかりやすく お伝えしようと思います。理学修士、ペットシッター資格、愛玩動物飼養管理士2級。 ペット用品販売会社での勤務経験もあります。