けいれん発作が起きた!猫のてんかん発作はどうしたらいい?【獣医師が解説】

猫のてんかん発作で歯、突然激しい症状が出てしまうため、ショックでパニックになってしまう飼い主さんは少なくありません。

しかし、てんかん発作でそのまま亡くなってしまうということはめったになく、落ち着いて対処することが大切です。

猫のてんかんにはさまざまなタイプがあり、その対処法や治療法はそれぞれ異なります。

今回は、猫のてんかんについてまとめてみました。

この記事を読んで、てんかん発作を予防するとともに、発作が出た時に慌てないで対処できるようにしておきましょう。

 

猫のてんかんってどんな病気?

まずは猫の基本的な情報を知っておきましょう。

てんかんが起きるメカニズム

脳の中の情報伝達には電気信号が使われます。

ヒトや猫が体を動かそうとすると、脳の中で電気信号が流れ、それが伝わって手足などを動かす指令となります。

てんかんは、何らかの原因によって、脳の中で異常な電気信号が出てしまうことで起こる、脳神経の病気です。

てんかんでは、自分の意思とは関係ない電気信号が突然出るため、けいれんなどの発作が起きてしまいます。

猫にてんかんを起こす原因

てんかんには原因不明の「特発性てんかん」と、てんかん発作を起こす基礎疾患が存在する「症候性てんかん」の二種類があります。

特発性てんかん

特発性てんかんは、真性てんかんとも呼ばれ、てんかん発作を起こす基礎疾患(元となる病気)を持たない猫に起こるてんかん発作です。

遺伝的な要因が関係している可能性が指摘されていますが、現在のところ特発性てんかんの原因は不明です。

症候性てんかん

症候性てんかんは、何らかの病気があって起こるてんかん発作で、二次性てんかんとも呼ばれています。

基礎疾患にはいくつかの病気がありますが、原因が脳(頭の中)にある「頭蓋内疾患」と内臓にある場合「代謝性疾患」のさらに二種類に分けられます。

頭蓋内疾患

頭の中(脳)に原因があり、てんかん発作を起こす病気です。てんかん発作を起こす頭蓋内疾患には以下のような病気があります。

  • 脳腫瘍
  • 頭部外傷(脳挫傷や脳出血など)
  • 脳炎
  • 水頭症
  • 脳梗塞
  • 脳の低酸素など
代謝性疾患

代謝性疾患は、内臓のどこかに異常があり、それが脳に悪影響を与えることで発作が起こる病気です。

以下のような病気では、代謝性疾患によるてんかん発作が起こります。

  • 低血糖
  • 高アンモニア血症(肝不全、腎不全など)
  • 電解質の異常(ホルモン疾患、悪性腫瘍、腎不全など)
  • 中毒

発作の症状

発作は、「突発的に起こる何らかの症状」のことを指しますが、てんかん発作と言った場合には、痙攣(けいれん)発作のことを指すことが多いです。

ただし、てんかん発作には痙攣以外にも以下のようにいくつかの症状があります。

けいれん

てんかん発作で最も一般的なのは、けいれんの発作です。

けいれんとは手足など体の一部がピクピク動く症状のことです。

てんかん発作で出て来る典型的なけいれんは「強直性けいれん」と呼ばれるものです。

強直性けいれんが起こると、猫は横になって意識がなくなり、手足が硬直したように伸びてしまいます。

手足がびくびく動いたり、手足を激しく動かしたりする発作も強直性けいれんに含まれます。

強直性けいれん以外にも、体の一部のみがけいれんする「部分発作」と呼ばれるてんかん発作もあります。

よだれ

てんかん発作が起こると、よだれが出るケースが多いです。

強直性けいれんと同時によだれが出ることもありますし、軽い発作の場合には、意識はあるけれどよだれのみが非常に多く出るというケースもあります。

失禁

強直性けいれんに伴い、尿や便を漏らしてしまう猫もいます。

強直性けいれんの間は意識がなくなり、全身の筋肉に力が入ることが多いため、尿や便は漏れやすくなります。

その他

てんかん発作にはさまざまなタイプがあると言われており、顔面の筋肉がピクピク動く「チック」や急にボーっとして無反応になる「欠神発作」、突然急に走り出す発作など、さまざまな症状があります。

強直性けいれんのように倒れて手足をバタバタさせるような症状でない場合、てんかん発作なのか、猫の癖やその他の病気の症状なのかを見極めるのは難しいこともあります。

発作の頻度

発作の頻度は、その猫によって全く違います。

特発性てんかんの場合は、毎日起きてしまうケースもありますが、数年に1回しか起きないこともあります。

また、発作の長さもそれぞれですが、一般的には5分以内に自然に収まります。

症候性てんかんや代謝性疾患では、発作が止まらず非常に長くなることも多いです。

特発性てんかんでも、てんかん発作が連続して起こる「てんかん重責(じゅうせき)」が起こると、自然にけいれんが収まらないこともあります。

脳腫瘍や脳炎、代謝性疾患など一部の症候性てんかんでは、治療を行わないと発作の頻度が増えたり、発作の長さがどんどん伸びてしまったりすることがあります。

また、これらの病気では、てんかん発作だけではなく、元気や食欲の低下など一般状態もどんどん悪くなることが多いです。

一方で、特発性てんかんの場合は、発作が起きているとき以外は全く元気で食欲もあり、一般状態は良好です。

発作のきっかけ

てんかん発作は特に何のきっかけもなく起きることが一般的です。

中には、病院やトリミングに行くなど緊張した場面で発作が起きてしまうことがあります。

また、腎不全に伴う症候性てんかんなどでは、音や刺激に敏感になり、大きな音や光などの刺激により発作を起こしてしまうこともあります。

どんな猫でてんかん発作は起こりやすい?

てんかん発作はすべての猫種に起こると考えられており、特別てんかんを起こしやすい猫種というのは現在知られていません。

特発性てんかんの大部分は、3歳までに初発の発作が起こると言われています。

一方で、内臓の疾患や脳腫瘍などの病気のリスクが高くなる高齢猫では、症候性てんかんの発生頻度が高くなります。

つまり、若い猫でてんかん発作が出た場合は特発性てんかんが、高齢になってから初めて起きたてんかん発作では症候性てんかんの疑いが強くなります。

また、昔交通事故などを経験した猫では、回復してしばらくしてから脳のダメージによる症候性てんかんが出て来ることもあります。

 

てんかんの検査と治療

では、てんかん発作で動物病院へ連れて行った場合に何をするのかを見て行きましょう。

てんかんの検査

てんかん発作を起こして猫を動物病院委連れて行った場合、身体検査をした後に血液検査を行うことが多いです。

これは、血液検査で診断可能な代謝性疾患がないかどうかを調べるためです。

血液検査でてんかん発作を起こすような異常が見つかった場合は、代謝性疾患の可能性が高く、その原因をさらに追及していきます。

もし血液検査で異常が認められない場合には、発症年齢やそのほかの症状などをもとに、特発性てんかんもしくは頭蓋内疾患による症候性てんかんと仮診断をしていきます。

実際に頭蓋内疾患の診断は一般の動物病院では難しく、MRIや脳波を測定できる大学病院などの二次診療施設の受診が必要になることもあります。

そのため、一般的には、若い猫でてんかん発作が起き、血液検査に異常がない場合には特発性てんかんとして治療していくことが多くなります。

てんかん発作の治療

てんかんの治療には、発作を抑える治療と、原因の病気に対する治療の二つがあります。

発作を抑える治療

特発性てんかんの治療は、病気を治すのではなく、発作を抑える(頻度を下げる)目的で行います。

症候性てんかんの場合でも、原因となる病気の治療をしているのにもかかわらず発作が出てしまう場合や、根本的な病気の治療が難しい場合には、発作を抑える治療が必要になります。

まず、今の時点でけいれん発作が出ている場合には、注射で発作を抑えていきます。

通常の注射で発作を抑えることができない場合には、点滴などの入院治療が必要になることがあります。

また、まれにけいれん止めの注射で重責発作が止まらない場合には、麻酔薬を使って止めなければならないこともあります。

うまく発作のコントロールができたら、以下のような維持治療に移行します。

てんかん発作の維持治療の目的は、あくまで発作の頻度を下げることにあります。

てんかん発作の頻度が低く、程度もひどくないのであれば、無治療で過ごすことも少なくありません。

維持治療に使う薬には、フェノバルビタールやゾニサミドなどがあり、薬でコントロールするためには予防的に薬を飲み続ける必要が出てきます。

症候性てんかんの治療

症候性てんかんの猫に対しては、治療可能であれば、その病気自体を治療しててんかん発作を起こさないようにしていきます。

例えば脳腫瘍では、手術や放射線で腫瘍そのものを切除したり小さくしたりすることで、脳の圧迫を減らして発作を起こさないようにすることも可能です。

手術や放射線ができない場合でも、ステロイド剤などで脳の圧迫や炎症を抑えることで発作の症状をコントロールできることもあります。

代謝性疾患の場合は、その内臓疾患を治療することで、てんかん発作が劇的に良くなることも多いです。

特に低血糖であれば糖分を補給することで、基本的に発作は瞬時に消失します。

代謝性疾患では、原因となっている血液の異常を点滴や薬で改善することで、発作自体のコントロールはできることが多いです。

ただし、根本となる原因の治療を行っていかないとすぐに発作が繰り返してしまうので注意が必要です。

家での処置や気をつけること

てんかん発作を持っている猫を飼っている場合、まずはてんかんの頻度がどれくらいあるのか(ありそうなのか)を把握することが大切です。

特に昼間の時間に家にヒトが誰もいないような時間が長い場合、留守中にひどいてんかん発作を起こしている可能性があります。

家に帰った時に発作が起こった後のような乱雑になっている場所がないか、失禁した後がないか、猫によだれが付いていないかなど気にしてあげるようにしましょう。

心配な方は、家にペット用の防犯カメラを付けて、たまに様子を見てあげるのもいいかもしれません。

発作の頻度が増えて来る場合には、薬を飲まないと危険な重責発作が起きてしまう可能性もあるのであまり放置しないようにしてください。

それから、発作が起こっている最中は、あまり手を出さない方がいいでしょう。

発作中に噛まれてしまい飼い主さんが大けがをしてしまうことがあります。

猫が頭を打たないよう、できるだけ広くて下が柔らかい場所に移して様子を見てください。

大きな声をかけると悪化しますのでパニックになって大声で呼ばないようにしてください。

また、長時間発作が続いて体が熱くなっている場合には、熱中症になってしまうことがあるので、濡れタオルなどで冷やすようにしてください。

薬の副作用

てんかん発作を抑えるお薬にはいくつかの種類がありますが、主に使われる抗てんかん薬はフェノバルビタールとゾニサミドです。

それぞれの注意点を見ておきましょう。

フェノバルビタール

フェノバルビタールは昔から使われていた薬ですが、肝臓への負担と異常な食欲増進という副作用がみられることがあります。

肝臓の負担に関しては、症状を出さずに進行してしまうことが多いため、症状が出た時にはすでにダメージが進行してしまっていることもあります。

フェノバルビタールを飲んでいる場合には、定期的に血液検査などでチェックしておいてもらうことをおすすめします。

フェノバルビタールによって食欲が強く刺激される猫は多く、体重管理もしっかり行っていく必要があります。

フェノバルビタールを飲み始めたら太ってきたというネコは多く、肥満による糖尿病などの併発にも注意が必要です。

飼い主さんがしっかり食事量のコントロールをしたり、カロリーの少ないダイエット用フード(通常のフードよりも満腹感は増します)を与えたりことで対処するようにしてください。

また、薬が効きすぎるとボーっとしたりふらついたりすることがあります。

そういった症状がある場合は、薬の効き過ぎの可能性があるため、用量を獣医さんに相談するといいでしょう。

ゾニサミド

ゾニサミドにも肝臓への負担があるとは言われていますが、フェノバルビタールに比べると軽度です。

時々、嘔吐やよだれ、下痢などの消化器症状が出る猫もいます。

比較的副作用が少ないため、最近では猫にもゾニサミドを処方することが増えてきました。

ただし、どちらの薬が効くかは飲ませてみないとわからなく、フェノバルビタールの方がうまくコントロールできるということもありますので、一概にゾニサミドの方がいいということではありません。

 

てんかんの予防

てんかん発作を予防するためには、抗てんかん薬を飲ませることが最も有効です。

抗てんかん薬は同じ量を飲んでいても、体の中の濃度が違ってしまうこともあるため、効きが悪い場合には血液検査で血中濃度を測定してもらい、薬用量の増量を考えてもらった方がいいでしょう。

また、体質によっては薬の合う合わないもあるため、薬の効きが悪い場合や薬による副作用が出てしまった場合には、薬の種類の変更を相談する必要があるかもしれません。

それから、症候性てんかんの場合は、原因となっている病気そのものの治療が、発作の予防にもつながります。

しっかり検査をしてもらい、原因となる病気がある場合はその治療を一緒にしてもらいましょう。

また、普段から発作が起こるシチュエーションが決まっている場合には、できるだけそういった状況を作らないことも発作の予防につながります。

 

てんかん発作の合併症

てんかん発作自体は、それが起きたから命に係わるというものではありませんが、長時間てんかん発作が続いてしまうと、危険な合併症が起きてしまうことがあります。

熱中症

てんかん発作の合併症の一つが熱中症(高体温症)です。強直性けいれんの発作の間は、筋肉が常に緊張した状態になるため、熱を大量に発生します。

たとえ涼しい場所にいたとしても体内から大量の熱を発生するため、体温が上がり熱中症と同じ状態になってしまうことがあります。

高体温が続くと、肝不全や腎不全など多臓器不全に移行してしまう可能性もあり、そのまま亡くなってしまうこともあるので注意が必要です。

脳障害

長時間のてんかん発作が起きると、脳圧が上昇してしまうことがあります。

脳圧が高い状態が続いてしまうと、脳のダメージへとつながり、発作が止まった後に脳障害が残ってしまいます。

その場合には、盲目や旋回運動、ふらつきなどの脳障害による後遺症が残ってしまうリスクがあります。

てんかんの早期発見・早期治療のために

てんかんの早期発見のためには、普段から愛猫の様子をしっかり見ておくことが大切です。

留守中に発作が起こることもあるので、帰ってきたら部屋や猫の状態をしっかり観察すること大切です。

また、発作が起こってしまった場合には、余裕があればその様子を動画で撮ってもらえるといいでしょう。

それを動物病院へ持って行き獣医さんに診てもらうことで診断の助けになります。

てんかんを早期に発見することができれば、早期治療につながるだけでなく、原因となっている重大な病気の早期発見につながることもあります。

様子が変な場合には早めに動物病院で相談するようにしましょう!

まとめ

てんかん発作は猫でも比較的一般的な病気です。

症状は非常に強烈ですが、特発性てんかんの場合はうまく付き合っていくことで、元気に長生きできることは多いです。

一方で同じてんかんでも症候性てんかんの場合には、命にかかわる病気が隠れていることがあります。

高齢の猫で初めて発作が出た場合や、数カ月の間にどんどん発作が悪化する場合には、症候性てんかんの可能性があり、注意が必要です。

てんかん発作にはさまざまタイプがありますので、けいれん発作だけでなく、よだれやチックなどの症状がある場合も早めに動物病院で相談するようにしてくださいね。

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