犬の軟便はどうすれば?病院に行くタイミングはいつ?【獣医師が解説】

愛犬の便が緩い感じがする、下痢ではないんだけど、いつもよりも柔らかい…そのような経験はありませんか?

下痢ではないし、このまま様子を見ていても良いのか、動物病院へ行かないといけないのか、判断に迷うこともあると思います。

迷っているうちにいつのまにか治っていた、ということもあるかもしれませんね。

しかし、様子を見ていても一向に良くならない、ひどくなってしまう、ということもあります。

今回は犬の軟便についてです。原因として何が考えられるのか、病院へ行くタイミングはいつか、どのような治療をするのか、など、犬の軟便について考えます。

 

犬の軟便とは

犬の軟便とは

犬の下痢の定義は、教科書的には、

  • 排便回数
  • 便の水分量、緩い質感
  • 排便量

が増加すること、とされています。

犬の正常便は適度に水分を含み、しかし、手で掴んでも崩れないくらいの硬さがあります。

便を片付ける際に手で掴み、便が崩れて残ってしまうようなら、正常よりも多く水分が多く含まれ、軟便になっている可能性があります。

ソフトクリームくらいの硬さでしたらまだ軟便と言えるかもしれませんが、もし形がほとんどなく、泥状、水様でしたらそれは明らかな下痢ですね。

しかし、上記の定義から考えると、広い意味で軟便も下痢に含まれる、と考えても良さそうです。

 

考えられる原因

軟便は正常便と下痢の間です。

つまり、下痢の一歩手前とも考えられますし、正常便の域を少し外れただけ、ともとれます。

それではどんな原因が考えられるのでしょうか。

水分摂取量が多い

口から摂取した水分は主に大腸で吸収されます。

そのため、大腸で吸収しきれない程の水分を摂取してしまうと、便の水分量が増え、軟便になることがあります。

例えば、よく見かけるのが、離乳期の子犬です。

離乳期の子犬にはふやかしたフードを与えると思いますが、ふやかすために使う水分量が多いと軟便になってしまうことがあります。

また、缶詰などウェットタイプのフードを与えている場合にも軟便になることがあります。

缶詰は重量のおよそ8割程度もの水分を含んでいますので、缶詰だけを与えている場合にも軟便になることがあります

大腸への便の停滞時間が短い

先述の通り、便の水分量は大腸で調整します。

そのため、大腸への便の停滞時間が短いと緩い便になります。

これには生理的な原因と、病的な原因とが考えられます。

まず、生理的な原因です。ご飯を食べると反射が起こり、腸が動いて便意を催しますが、消化管の動きは、自律神経にもコントロールされています。

そのため、緊張したり、恐怖を感じるなど、ストレスにより腸が正常な動きではなくなることもあります。

そういった場合には、まだ水分が十分に吸収されていない状態で排便が促される状態になるため、水分量の多い軟便になるのです。

たまたま準備のできた便が排泄されれば正常便ですが、自律神経によって促された排便は何度か起こることが多く、回を重ねるにつれ便の水分量も多くなります。

消化不良を起こしている

食べ物の消化吸収は小腸で行いますが、何らかの原因で消化不良を起こしている場合には、消化吸収されるべきものが大腸へ流れ込むため、大腸での水分量の調整がうまく行かずに軟便になります。

消化不良は食べ慣れないオヤツや食べ物を与えたなどが原因になる事もありますし、小腸で炎症がある場合にも起こります。

大腸に何らかの問題がある

水分の吸収をする大腸に何らかの問題があれば軟便や下痢になってしまいますよね。

常に緊張してストレスを感じているなどの生理的なことも原因になりますが、寄生虫に感染している、大腸炎を起こしている、腫瘍ができているなどの可能性もあります。

炎症や腫瘍があると、排便回数が増える、血便が出るなど、他にも何らかの症状を伴うことが多いです。

 

獣医師に行く前に

獣医に行くと決めたら

どんな症状にも「急性」と「慢性」があります。急性とは、突然に始まり、症状が出てから2週間以内です。

慢性とは、同じ症状が2週間以上続いている状態です。

何かいつもとは違った食べ物を食べた、いつもとは違う環境に置かれた、など、軟便になる原因に心当たりがあり、愛犬に元気、食欲があるのであればご自宅で経過を見ていただいても良いと思います。

この場合、時間の経過と共に良くなればそれで良いのですが、悪化していくようでしたら動物病院へ受診するべきです。

特に何か原因に心当たりがなく、良くも悪くもならずにダラダラと軟便が続いている場合、慢性経過となる前を目安とし、1週間を経過しても軟便が続くようなら動物病院の受診を検討した方が良いでしょう。

また、体重が明らかに減っているような場合にはできるだけ早く診察を受けるようにしましょう。

動物病院に行く際に確認したい事項

動物病院へかかると、以下のことを聞かれると思いますので、答えられるようにしておくと良いでしょう。

いつからどの程度の軟便が出ているのか

おおよそでよいので、どのくらい前から、どんな状態の便が出ているのか覚えておいてください

便内容

便の色や便の内容物についてです。血液が混じっていたり、明らかに未消化のものが出ていないか、また、寄生虫が排泄されていないかなどチェックしてください。

食事内容やオヤツの内容

普段の食事の内容、オヤツで食べたもの。もし、人間の食べ物を与えた場合にも恥ずかしがらずに何を食べたのかを申告しましょう。

原因を突き止めるのに大切な手がかりになります。

症状の変化があるかどうか

軟便になってから症状はどうでしょうか、悪化しているのか、変わらないのか、良くなってきているのか、症状の変化についても観察してください。

軟便以外の症状

この項目は大切です。

軟便以外に例えば、食欲が落ちている、元気がない、嘔吐がある、お腹がキュルキュルと音がしている、熱っぽいなどの症状がないか、また、それ以外にも些細なことでもよいので、愛犬のいつもの状態とは異なる様子が見られれば申告してください。

検査や治療

検査方法

どんな場合でも、まずは問診と身体検査をします。

そして、聴診、検温、触診などを行います。軟便の場合には、便に異常があるので検便を行う事もあります。

特に疾患が疑われなければ投薬で様子を見ることが多いですが、体重が著しく減っているなど、何か疾患が疑われる場合には、初診時にも血液検査やレントゲン、腹部超音波検査を行うことがあります。

治療

それでは、原因別に治療について進めていきます。

水分摂取量が多い

子犬の離乳食の場合には、乳歯の萌出の状態を確認しながら、ふやかしをやめたり、ウェットフードの量を減らしていきます。

ドライフードを食べ、自分が飲みたいと思う量だけを自由飲水にすることで軟便がおさまることが多いです。

成犬の場合には、多飲は一般的には疾病によるものである事が多く、精査により原疾患が分かれば、疾病に応じた治療を行います。

主に缶詰を食べている場合で、缶詰以外にフード変更ができない時には、特に治療の必要はなく、軟便の改善が困難になります。

大腸への便の停滞時間が短い

ストレスによるものでは、ストレス源から解放されれば自然に治癒します。

例えば、トリミングや通院、また、花火や雷などの大きな音がストレスでお腹を下してしまう犬もいると思いますが、原因が無くなれば自然治癒するものです。

消化不良を起こしている

問診により、普段とは異なるもの、初めて食べたものが原因として疑われる場合には一般的に消化剤、乳酸菌製剤を使います。

悪化傾向があれば止瀉薬を用いたり、高消化性フードを一時的に使う事もあります。

大腸に何らかの問題がある

寄生虫の感染がみられれば駆虫薬で寄生虫を駆除します。

大腸炎などを起こして便の停滞時間が短い場合には、投薬による治療を行います。

また、大腸炎の中には、抗生物質や食物繊維に反応して改善するタイプのものもあります。

そのような場合には、内服薬の変更やフード変更を行い、治療効果を確かめながら治療を進めます。

家での処置や気をつけること

軟便は水分を多く含んでいますので、愛犬が踏んでしまうと愛犬も環境も汚れてしまいますので、排便がみられたら、できるだけ早く片付けてあげるとよいですね。

また、軟便をしている時にはお腹に負担がかかっていると考え、消化の悪そうなオヤツや人の食べ物を与えることは控えたほうがベターです。

予防

軟便はお腹を下してしまう前兆かもしれませんし、お部屋を汚してしまう事もあります。

予防できるのであればしたいものですよね。

原因によっては予防するにできない事もありますが、初めて食べるものや人の食べ物を与えた場合には、軟便になるかもしれませんので、その後の愛犬の様子には気をつけてあげてください。

また、大きな音や来客にストレスを感じ、軟便になってしまう場合には、愛犬に声がけをして安心させてあげるなどの対応をしてあげると良いですね。

食べてはいけない物

軟便の時に避けたい食べ物はどんなものがあるのでしょうか

消化の悪いもの

ビーフジャーキー、オヤツ用のガムなど

人の食べ物

特に、パン、揚げ物、お酒のおつまみなど。

野菜でも繊維質の多いものは消化不良を起こす事があります。

ササミや茹で野菜でも食べ慣れたものであれば少量は大丈夫です。

食べても良いもの

原因にもよりますが、生理的な場合にはいつものフードを普段通りに与えてください。

消化不良や大腸炎などが疑われる場合にも、まずはいつものフードで様子を見てもらってもよいと思いますが、トッピングなどは控えたほうが良いでしょう。

いずれの場合でも、食欲がなければ無理に与えることはせずに動物病院への受診をお勧めします。

早期発見

排便状態に限ったことではありませんが、愛犬の様子を普段から家族みんなで把握する事が大切なことです。

もし、何か普段とは異なる食べものを与えた場合、異なる食べものを食べてしまった場合にはその情報を家族皆で共有する事が大切です。

小さいお子様がいらっしゃるご家庭では、子供の落とした食べ物を拾い食いしてしまう事もあると思います。

食べてしまった場合には仕方がありません。

その事実を皆が知っておけば、もし軟便をしても慌てることもありませんよね。

まとめ

軟便は下痢でもなく正常便でもないため、どう対処するべきか迷うと思いますが、様子を見ておいてもよい場合、そうでない場合があります。

軟便をしてもすぐに慌てることはありませんが、愛犬の排便状況を観察するようにし、軟便以外の症状が出るようだったり、続く場合には病気のサインかもしれませんので病院に受診をするようにしてください。

排便回数や便の状態を把握することは愛犬の健康状態を把握することにつながります。

家族皆で愛犬の様子を観察して普段とは違う様子があればその情報は共有するようにしましょう。

関連記事