愛犬のそのよだれは正常?異常?危険なよだれと病気に気付いてあげよう【獣医師が解説】

犬は病気でなくてもよだれが多く出やすい動物ではありますが、犬だから多くても大丈夫とは言えません。

よだれによって気付くことのできる犬の病気もあり、正常なよだれか病的なよだれかをしっかり見極めておくことが大切です。

今回はよだれが出る病気についてお話しします。

この記事を参考に、異常なよだれに早く気付いて、病気の早期発見につなげられるようにしてくださいね。

 

よだれとは

よだれは唾液の成分が口から漏れ出たものです。

犬の口の中では常に唾液が作られていますが、何らかの理由で唾液が口の外に出てきてしまうとよだれになります。

よだれが出る理由

よだれが出るメカニズムは主に二つあります。

唾液の過剰産生

唾液の産生量が増えることで、唾液があふれるとよだれが出てきます。

唾液の過剰産生は、精神的な理由や神経的な問題、口の痛みなどの刺激が原因となって起こることが多いです。

嚥下(えんげ)の異常

物を飲み込むことを嚥下と呼びますが、嚥下の機能に異常がある場合も唾液の量が増えてきます。

唾液は常に口の中で作られており、嚥下に問題があると飲み込む唾液の量が減ってしまうため、口の外によだれとして出てきてしまいます。

喉や舌の機能の異常や食道内異物では、嚥下の異常により唾液が増えてきます。

生理的(問題ない)よだれ

よだれは唾液の一部であるため、病気でなくても多少は出ます。以下のような場合には病気でなくてもよだれは増えてきます。

大型犬・短頭種

大型犬や短頭種では、健康でもよだれが多い犬が少なくありません。

人と違い、犬はすきっ歯です。

口の中に溜まった唾液は歯の隙間から流れ出て歯と唇の間に溜まってきます。

大型犬や短頭種の犬では唇の皮膚が緩めになっており、その隙間からよだれが出てきやすいのです。

老犬

高齢になってもやはり唇の皮膚が緩くなり、唾液が漏れやすくなります。

急激によだれが増えて来るのではなく、年齢とともに徐々に増えてきた場合には、加齢に伴うよだれの可能性が高いでしょう。

フードを待っているとき

唾液は食べ物の消化に必要な消化酵素を含むため、フードを食べるときには増加します。

普通にフードを食べていればフードと一緒に唾液を飲み込むため、よだれが増えることは少ないですが、「待て」などでフードを待たせると増えた唾液がそのままよだれとして出てきます。

これは体に必要な反応ですので、何も問題はありません。

緊急性を伴うよだれの特徴

上に書いたように、よだれには問題のないものも多いですが、危険なよだれもあります。

特に以下のような症状がある場合には、すぐに動物病院に連れて行く必要があります。

意識レベルの低下を伴うよだれ

よだれが出るとともに、明らかにぐったりして、呼びかけなどに反応が弱い場合にはかなり危険です。

中毒や血液の異常、脳の病気など命に関わる状態である可能性が高いため、すぐにでも動物病院へ連れて行ってもらった方がいいでしょう。

けいれんを伴うよだれ

けいれんとよだれが同時に出ている場合にも、同じく緊急性が高く様子を見ているとそのまま亡くなってしまう可能性もあります。

早く動物病院へ連れて行きましょう。

大量に出て止まらないよだれ

よだれにはさまざまな原因がありますが、よだれが止まらない場合は明らかな異常です。

中毒や脳神経の異常など命に関わる病気の可能性もあり、できるだけ早めに動物病院で診てもらった方がいいでしょう。

数分で止まるようなよだれであれば異常ではない可能性も高くなりますが、止まらなければ早めに動物病院で診てもらいましょう。

動物病院を受診するべきよだれ

以下のような場合にも、病的なよだれの可能性が高いため、動物病院で診てもらうようにしましょう。

  • 何度も繰り返すよだれ
  • 少量だが、ずっと出続けるよだれ
  • 普段出ないような量のよだれ
  • 元気低下や食欲不振、動きがおかしいなどその他の症状を伴うよだれ
  • 出血を伴うよだれ
  • 匂いのきついよだれ
 

よだれが出る病気の症状と治療

ここからは、よだれが増える病気について紹介いたします。

口の中の異常

歯周病

歯周病は犬のよだれの原因として非常に多い病気です。

歯磨きをする習慣のない犬には歯石がとてもつきやすく、歯石から歯周病を起こします。

歯周病では口臭のきつい膿のようなよだれが出ることが多いです。

また、重度の歯周病では口を触るのを嫌がったり、口から出血することもあります。

歯石が多い犬では歯周病になりやすいため、口の匂いや痛みなどがないかどうかをしっかりチェックしておくと早期発見につながります。

歯周病の根本的な治療には、歯石除去や抜歯などが必要になることが多いです。

ただし、これらの治療には全身麻酔が必要になるため、薬で炎症や感染を抑えていくことも少なくありません。

口の中の異物

口の中に針やつまようじなどが刺さったり、歯の隙間に糸が挟まっていたりしても、刺激によってよだれが多く出ます。

口の中の異物では、歯周病と違い、急激によだれが多くなります。

よだれの匂いはそれほどきつくありません。よだれ以外の症状としては、非常に口を気にするということが特徴になります。

突然、前足で口をかく動作や顔をものにこすりつける動作を頻繁にするようになることが多いです。

口の中の異物はの治療は異物の除去ですが、口の中をしっかり見せてくれない子も多いため、鎮静が必要になることもあります。

針などによって口の中が傷ついた場合には、しばらく薬が必要になることもあります。

口の中の腫瘍

口の中に腫瘍があっても、痛みや違和感からよだれが多くなります。

口の中に腫瘍があると、歯周病と同じような症状を出すことが多いですが、歯周病に比べると体重減少を伴うケースが多いです。

口の中の腫瘍は早期発見できれば手術で取り除くことが可能な場合もありますが、進行してしまうと治療が難しいケースが多いです。

食べる量だけでなく、食べるスピードなどにも注目しておくと早く気付くことができるかもしれません。

また、日頃からスキンシップの一環として歯磨きをしたり、や口の中を見る癖をつけておくといいでしょう。

消化器の異常

食道内異物

歯磨きガムやリンゴのかけらなどを丸呑みした場合に、食道に詰まってしまうと食道内異物になります。

食道内異物では、唾液を飲み込むことができないため、よだれが非常に多くなります。

食道内異物では、「えずくけれど何も出てこない」「なにかそわそわ落ち着かない」などの症状が出てくることもあります。

食道内に何かがあると、食道炎や食道穿孔など危険な状態になってしまうことがあるため、早く取り出さなければなりません。

通常は全身麻酔をかけて内視鏡で異物を取り除きます。

強い吐き気

重度の胃腸炎や膵炎、腸閉塞などによって強い吐き気があるとよだれが増えてくることが多いです。

通常、そのような場合には食欲不振や腹痛、嘔吐などを伴います。

特に嘔吐がある場合は、食べさせても嘔吐してしまい、余計によだれがひどくなったり脱水してしまうことがあります。

動物病院で吐き気の原因を調べてもらい、点滴や吐き気止めなど必要な治療をしてもらうことが大切です。

脳・神経疾患

顔面神経麻痺

顔面の筋肉を動かす顔面神経が何らかの原因によって麻痺する病気です。

原因不明の特発性顔面神経麻痺以外に、中耳炎や外傷などによっても起こることがあります。

顔面神経麻痺の特徴は、顔面の片側だけ唇が垂れ下がり、そちらからよだれが出るという症状です。唾液を口の中にとどめておけなくなるのでよだれが増えてきます。

自然に収まることもありますが、抗炎症薬による投薬治療を行っていくことも多いです。

治るまでしばらく時間がかかり、その間は食べ物が口からこぼれてしまうこともあるので、食餌の補助が必要になることもあります。

脳の病気(脳腫瘍・脳梗塞・頭部外傷・水頭症など)

脳に異常が出る病気では、さまざまな症状が出ますが、よだれも一つの症状になります。

高齢の子に多い脳腫瘍や脳梗塞だけでなく、事故や落下による頭部外傷、若い小型犬に多い水頭症などでも症状の一つとしてよだれが出てくることがあります。

脳の病気では通常、よだれ以外に元気の消失やふらつき、行動の異常などが出てくることが多いです。

普段から愛犬の状態を観察しておくことで早めに気付ける可能性が高くなります。

脳の病気はその原因によって治療法が異なります。

ただし、多くの脳の病気は、MRIなどの特殊検査を行わないと確定診断を付けられないことも多く、根本的な治療が難しいケースが少なくありません。

てんかん

てんかんは脳の中で異常な電気信号が出ることで、発作などの症状が起こる病気です。

てんかんの典型的な症状は全身のけいれんですが、よだれがけいれんの前兆として出てきたり、けいれんがなくてもよだれだけが出て来るようなてんかん発作もあります。

てんかんは、基本的には3歳までの若いうちに初発の症状が出て来ることが多いと言われています。

高齢になってからてんかんに似た発作が出て来る場合には、脳腫瘍や脳梗塞などが原因となっていることもあるので注意が必要です。

てんかんは、年に数回など頻度が少ない場合には治療をしないことも多いです。

頻度が多い場合には発作を起こしにくくするための薬を飲んで、てんかん発作をコントロールしていきます。

その他

中毒

中毒もよだれが増える原因として非常に多い病気です。

さまざまな物質による中毒でよだれは多くなりますが、以下のような物質による中毒ではよだれが出やすいです。

  • チョコレート
  • マカダミアンナッツ
  • 農薬
  • 人間の薬
  • アルコール
  • タバコ など

普段から拾い食いなどの多い若い犬で、突然よだれが増えてきた場合には何らかの中毒を疑った方がいいでしょう。

中毒ではよだれ以外におう吐や下痢、興奮、けいれん、意識レベルの低下など激しい症状が出て来ることも多いです。

中毒は飼い主さんの話から推測して治療していくことが多いですが、解毒剤などはほとんどないため、基本的には点滴などの対症療法がメインになります。

中毒物質を食べてしまってすぐであれば催吐処置などで中毒の予防や症状の軽減ができることも多いので、何か食べてしまった場合や中毒が怪しい場合には早めに動物病院へ行くことが大切です。

肝性脳症

肝性脳症は、重度の肝不全によってアンモニアなどの有害物質が体に溜まってしまうことで起こる病気です。

アンモニアは脳神経に悪影響を及ぼすため、よだれだけでなく、けいれんや意識レベルの低下などを伴うことが多いです。

肝性脳症は先天性の肝臓病や末期の肝硬変などで起こりますので、若い犬でも高齢犬でも起こり得る病気です。

基本的には血液検査で診断可能ですので、怪しい場合は血液検査をしてもらうといいでしょう。

先天性の肝臓病の場合には手術で完治することもあります。肝硬変などではお薬や食餌による対症療法がメインになります。

 

まとめ

よだれは、正常でも様々な状況で増えることがありますが、よだれが増える病気も少なくありません。

中には緊急性を伴う非常に危険なよだれもあり、それに気づきできるだけ早く動物病院へ連れて行くことも大切です。

この記事を参考に、病的なよだれに早く気付けるようにし、病気の早期発見早期治療につなげてくださいね。

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