猫とのキスは危険かも?室内飼育でも安心できない感染症も…【獣医師が解説】

最近は猫カフェなども増え、猫を自宅で猫を飼育しなくても可愛い猫と触れ合う機会が持てるようになりました。

自宅で飼っている方も愛猫以外の猫と接触することもできます。

可愛いとつい、顔を寄せて頬ずりしたり、キスしたいという衝動に駆られることも多いと思います。

実際に頬ずりやキスをしてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、顔を寄せて近づくことは猫にとっては不快に思うこともありますから、猫に嫌われてしまうかもしれません。

また、猫から病気をもらってしまう可能性もあります。

今回は猫にキスをすることについてお話しを進めたいと思います。

 

猫とキスすることに潜む危険

可愛い猫を少しでも間近に感じたい、という気持ちが抑えられず、ついキスをしてしまっていませんか?

猫の口の中にはいろいろな病原体が潜んでいます。キスをしてしまったがために、病気をもらってしまう危険もはらんでいます。

それでは、猫の口からうつる可能性のある感染症についてご紹介していきます。

感染する可能性のある病気や感染症

パスツレラ症

猫の90%以上が保菌していると報告されています。

主に爪や口の中に潜んでいる細菌です。

猫に噛まれたり引っ掻かれたりするとうつってしまいます。

口や唇に傷があればキスでもうつる可能性はあります。

猫は無症状ですが、人では40歳以上で発生することが多く、感染から数時間で傷の腫れや痛みが出ます。

感染が深部に及ぶと、骨に炎症が起き骨膜が壊死してしまうこともあります。

気道に入れば、気管気管支炎や肺炎を起こすこともあります。

猫ひっかき病(バルトネラ・ヘンセラ症)

猫ひっかき病という名称ですが、バルトネラ・ヘンセラは猫の口内にも存在するので噛まれたり、舐められたりすると感染する可能性があります。

猫は無症状ですが、人に感染すると、患部が赤く腫れて脇や足の付け根、首など、感染部位を支配するリンパ節が腫れ熱が出ることもあります。

運悪く脳や心臓に感染が及べば脳炎や心内膜炎を起こしてしまいます。

カプノサイトファーガ・カニモルサル症

カプノサイトファーガ・カニモルサルという細菌は猫や犬の口の中に存在する細菌です。

噛まれたり舐められたりすることで感染することがあります。

猫は無症状ですが、人に感染すると、特に高齢者や免疫が低下している方では重症化して敗血症を起こす恐れがあります。

初期症状は風邪に似ており倦怠感、発熱、頭痛、吐き気などです。

重篤化すれば全身に菌が回り、敗血症、骨髄炎を起こし、多臓器不全を起こすこともあります。

サルモネラ症

食中毒を起こす原因菌による感染症です。

感染している猫や保菌している猫の糞便に含まれていますが、猫はグルーミングをします。

もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中には原因菌が存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

猫では下痢をしたり無症状のこともあります。

感染後24〜48時間以内に症状が発現し、急性胃腸炎となります。悪心、嘔吐、下痢などの症状が出ます。

子供や高齢者では重症化することもあります。

カンピロバクター症

カンピロバクターは人では加熱不足の鶏肉、鶏肉の生食により感染し食中毒を起こすことが多い細菌です。

感染している猫や保菌している猫の糞便に含まれていることもあります。

猫はグルーミングをします。

もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中には原因菌が存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

猫は下痢をしたりまたは無症状のこともあります。

感染すると、腹痛や下痢と言った腸炎を起こし、悪心や嘔吐、発熱などの症状が出ることもあります。

潜伏期間が少し長く、2日〜5日とされています。

エルシニア症

食中毒を起こす原因菌による感染症です。

2種類の原因菌が関係しており、基本的には胃腸炎を起こしますが、結核に似て肉芽種という症状を出すことから仮性結核と呼ばれるタイプもあります。

感染している猫や保菌している糞便に含まれていますが、猫はグルーミングをします。

もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中には原因菌が存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません

猫は下痢をしたり無症状のこともあります。

感染しても成人では症状が出ないこともありますが、乳幼児に下痢を起こします。

仮性結核を起こすタイプの種では胃腸炎に加えて、発疹が出たりリンパ節炎を起こしたりします。

狂犬病

狂犬病は日本では清浄化されていると言われており、1957年に猫での感染が確認されてからの発症はありません。

狂犬病というと犬による咬傷が原因になると思われている方も多いと思います。

しかし、狂犬病ウイルスは人、犬、猫などすべての哺乳類に感染し発症すれば致死率はほぼ100%と高いものです。

感染した猫に粘膜や傷口を舐められれば感染の可能性もあります。

人の潜伏期間は長く、潜伏期間が数年にも及ぶことがあります。

潜伏期間中であればワクチン接種による症状発現予防もできます。

狂犬病の症状の1つに水を見ると恐がる、恐水症という有名な症状があります。

初期には発熱や頭痛、不安感など風邪のような症状から始まり、興奮、錯乱などを経て最終的には全身が麻痺して死亡します。

トキソプラズマ

人に感染すると流産や先天的な障害の原因になるため、ご存知の方も多いかもしれません。

感染している猫や保菌している猫の糞便にトキソプラズマが含まれています。

猫はグルーミングをしますので、もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中にはトキソプラズマが存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

猫では無症状です。

人でも無症状のことが多いですが、リンパ節が腫れたり視力障害、目の痛みが出ることがあります。

妊婦が感染すれば流産や先天的な障害の原因になる可能性があります。

回虫

感染している猫の糞便に虫卵が含まれています。

猫はグルーミングをしますので、もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中には虫卵が存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

寄生虫は種を超えて感染することは少ないですが、稀に迷い込んでしまって症状を起こすこともあります。

猫では子猫が感染すると下痢を起こしたり、食欲不振、お腹の張りが見られることもあります。

人では、迷入部位によって症状が異なります。

内臓移行をすれば発熱、食欲不振、倦怠感など、肺では咳、脳に移行すれば発作、眼に移行すればぶどう膜炎や視力障害などが症状として発現します。

クリプトスポリジウム症

クリプトスポリジウムという原虫が原因です。

多くの動物の消化管に存在していますので、猫に限らず動物から感染する可能性があります。

感染している猫や保菌している猫の糞便にクリプトスポリジウムが含まれています。

猫はグルーミングをしますので、もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中にはクリプトスポリジウムが存在し、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

猫では無症状です。

人に感染すると腹痛と下痢、水様下痢を起こします。吐き気や嘔吐、発熱が見られることもあります。

Q熱

コクシエラ・バーネッティという原虫が原因です。

感染している猫の糞便に病原体となる原虫が含まれています。

猫はグルーミングをしますので、もし、猫が感染していればお尻を舐めた口の中には病原体となる原虫が存在するため、キスすることで感染してしまう可能性が無いわけではありません。

滅多にはありませんが、咬傷から感染したり、Q熱に感染しているダニから感染することもあります。

猫では無症状です。

人に感染すると頭痛や悪寒、高熱などという症状が出ます。

気づかれた方もいらっしゃると思いますが、どの感染症も猫では無症状であることが多いのです。

明らかに体調が悪そうな猫とキスする方はみえないと思いますので、猫では無症状というところがやっかいなところです。

一見健康そうな猫でも保菌していることも十分に考えられますので、むやみやたらとキスすることは危険なことであると言えます。

猫に嫌われる

私たち人は猫が可愛いと思うとぎゅっと抱きしめたり、顔を近づけたいと思います。

猫はとても用心深く、ナーバスであるため、顔や目をじっと見つめられたり、必要以上に接近されることを嫌います。

もちろん、親しい猫同士で鼻をくっつけあったりして挨拶する様子は見られますし、慣れた猫が私たちに顔をくっつけてくることもあります。

しかし、それは猫の方から近づいてくる場合です。猫から寄ってくるのを待ちましょう。

 

猫とのキスで思い違いしがちなこと

完全室内飼育でも注意が必要

室内飼育でも注意は必要です。

私たちの口腔内に歯周病菌が存在するのと同じように、猫の口の中にも常在菌といって雑菌は存在します。

それが、パスツレラやボルデテラ・ヘンセラ、カプノサイトファーガ・カニモルサルといった細菌です。

生まれた頃から室内飼育でも注意は必要です。

猫は病原菌がたくさんなのか

猫には確かに多くの病原体を持っている可能性がありますが、それは人も同様です。

免疫力がしっかりしているため発症しない感染症もありますし、人の生活は猫より衛生的なので発症しない、または感染しないのです。

猫からうつる感染症は少なくはありませんが、常識的な範囲内での行動を取っていればまず感染する確率は低く、基本的には、猫を触ったら手洗いをしっかりすることが予防につながります。

特に免疫力が低い子供や高齢者では注意をしてあげましょう。

 

まとめ

猫から人にうつる感染症はたくさんあります。

通常はキスをしたからといって感染するものではもちろんありませんが、可能性が低いわけでもありません。

しかし運が悪ければ、思いもよらぬ感染症がうつってしまうかもしれません。

猫は無症状で経過することが多いですし、猫に噛まれたわけでもなければ、まさか猫のキスから感染したとも思わないと思います。

そうすれば診断が遅れ、重症化したり場合によっては手遅れになることもあるのです。

また、猫サイドに立って考えてあげても、猫とキスをすることはあまりお勧めができることではないようですね。

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